修繕維持の企画調整

(1)建物・設備の点検

マンションの建物や設備には様々な点検が必要です。

①日常点検(管理員等の巡回による目視点検)

②定期点検(法定点検:特定建築物定期調査、建築設備定期調査、消防用設備等点検、専用水道定期水質検査等 保守契約による点検:自動ドア、宅配ロッカー、エレベーター、機械式駐車場、給水ポンプ等 自主点検:役員交代時における新旧役員の建物巡回等)

③臨時点検(災害点検:地震後の建物点検 不具合点検:不具合都度)などがあり、それによって不具合箇所を見つけようとします。

これらの点検結果によりマンションの維持管理を行っていきますが、その基本は、

①補修(現状レベルを実用上支障のないレベルまで回復させる)

②修繕(現状レベルを建築当初のレベルまで回復させる)

③改修(現状レベルを現時点で要求されるレベルまで向上させる)を適切に組み合わせることにあります。

また、補修の方法については、故障が発生した時に対処する方法と一定の時間経過などを目安に故障が発生する前に交換してしまう予防保全という考え方があります。

メーカーや管理会社は往々にして予防保全を勧めますが、それが過大なであるがために修繕積立金に大きな負担が生ずることもあるので、不具合発生時の予兆は何か、また不具合時にどのような影響が出るかを検討した上で、どの設備にはどちらの方法を採るかを決めておく必要があります。

(2)日常の修繕工事

マンションには実に多種多様な修繕工事があります。漏水の原因究明や補修、門扉やサッシなどの開口部の経年劣化や不具合、給排水設備の経年劣化や不具合、消防設備や電気系統の経年劣化や不具合、照明器具のLED化など枚挙にいとまがありません。

これらの日常的な修繕工事は、個々の金額は小さくても、トータルではかなりの金額になるため、これらの工事の発注をどうコントロールするかはマンションにとって大きな課題です。

(3)大規模修繕工事

通常計画的にかつ同じ時期にまとまって行われる外壁等の工事を大規模修繕工事と呼んでいますが、ほとんどの場合に足場の設置を伴い、管理組合が行う工事の中で大きなウェイトを占めるもので、特に大手の管理会社は収益の大きな機会と捉えて、何等かの関与をすべく食指を動かしています。

管理会社の関与の仕方としては主に次のような態様があります。

①設計・監理をする。

この時に特定の施工会社が受注できるよう便宜を図り、手数料獲得を目指します。

②工事施工の元請けとなる。

自社での工事能力はなく、特定の施工会社を下請けに使い自社経費をオンすることになります。

いずれの場合にも、建物の事をよく知っている、また同じ会社なので工事完了時の引継ぎがスムーズでアフター点検が日常管理の中でしっかり行える、という点を管理会社の優位性として主張します。

しかしながら、これらの点は管理会社の優位性とはなりません。一般的に推奨されている設計監理方式の場合、管理組合のパートナーとして設計事務所に業務を委託しますが、建物の十分な事前調査を行った上で設計作業に入りますし、工事会社は契約に基づいて詳細な竣工図書を残しますので、日常管理への引継ぎも特に問題は生じません。逆に、1回目の大規模修繕工事では、新築時の瑕疵(契約不適合)責任が問題になることがありますが、親会社が売主であるような管理会社に工事を任せた場合には、その問題がうやむやにされてしまう危険性があります。